CD音質への道 #5


 質、量共にそこそこの音源、デジタルミキサー、パソコンを使ったHDR、マスタリングもこなした僕に降りかかってきた次の課題は、S/Nでした。

S/Nとは?
 S/N比(もしくはダイナミックレンジ)とは、ソース(非ノイズ)とノイズの比で、これが大きい方がノイズが少なく、小さいとノイズが多いということになります。機材を買えば大抵スペック表の中に載っているので一度は目にしたことがあるでしょう。基本的にS/Nの悪い機材を通るとどんどんノイズが増え、ソースの解像度が落ち、音に透明度がなくなってきます。このS/Nこそスタジオと自宅録音の決定的な違いだとしたら・・・改善方法を検討してみる価値は大いにありそうです。

サウンドカード
 マルチトラックレコーディングのオーディオデータを録音したり、少なくとも最終的に出来た音をCDに焼く前には、サウンドカードからパソコンに音を取り込むことになると思います。ところが、Sound Blasterなどの標準的なサウンドカードではここでのS/Nが極端に悪いようです。とりあえず以下にMSSを使って計測してみた結果(オーディオレコーディングでモニターをチェック)を示します。

サウンドカードS/N備考
Sound Blaster AWE 64 Gold60dbSPDIF端子をすぐ上のスロットに配置、接続
Sound Blaster AWE 64 Gold75dbSPDIF未接続。上2スロットは空き
Card D Plus62dbすぐ下のスロットにSound BlasterのSPDIF端子
GINA(Analog In)85db外部ボックス
16bit Digital In96db理論値
20bit Digital In120db理論値
24bit Digital In144db理論値

*すべて録音レベル0dbでテストしています。
*デジタル入力の理論値は単純に6db×bit数で算出しています。
*MSSでは16bitにしか対応していないため、16bit以上のデジタル入力でもS/N比は96db止まりとなります。
*数値はあくまでもある特定の環境で測定した結果であり、一般的なものではありません。

 どうでしょう?CDのS/Nが16bit(96db)ということ、パソコンに取り込んだ後でさらに6db〜12dbのダイナミクスを稼ぐ(ボリュームを上げる)ことを考えると、Sound Blaster Goldの60db〜75dbは明らかに不足であると言えます(Sound Blaster GoldはS/N比90dbをうたっていますが、恐らくこれは再生時のS/N比でしょう)。
 注目すべきなのはサウンドカードの近くにSPDIF(デジタル)端子を配置した場合の極端なS/Nの低下で、Sound Blaster Goldの場合10dbの差が生まれ、Card D Plusもとてもハイエンドオーディオカードとは思えない62dbというひどい数値を出しています(ここでは計測していませんが、恐らくSPDIF端子をカードから遠ざければもう少しましなS/N比が得られたと思います)。僕の環境で実際録音されたノイズ(Inputに何もつながない状態で録音したもの)を拡大して見てみると、規則的な高周波ノイズと低周波ノイズ(0hz)がくっきりと認められました。低周波ノイズの方はほとんどソースに影響を与えないタイプのノイズなので、録音した後にハイパスフィルターをかけてやりさえすればさほど問題ありません。高周波ノイズもほとんど人間の耳には聞こえないようなもの(非常に高周波で、レベルも低い)なのですが、こちらは確実にソースの解像度を落とす要因になりそうです。

 さて、解決策ですが、やはりパソコンの中は電磁波の嵐ですから、アナログで入力する以上ある程度以上のS/N改善は望めません。結局デジタルミキサーからデジタルサウンドカードで入力するのがベストです。ミキサーがデジタルでなくても、一度マスター用など高品質なDAT、MDデッキに落としてからデジタルサウンドカードで入力すれば、かなりの改善が期待できそうです。
 アナログサウンドカードを使う場合は、できるだけ録音時のS/Nの良いものを選択すること(今回のテストではGINAが良いという結果になりましたが(このカードはDigital In/Outも持っていますね)、他にもS/Nの高いサウンドカードはあると思うので、実際に持っている人に計測してもらうなどして情報を集めましょう)、現在のサウンドカードで使用するなら、できるだけサウンドカードの周りに他のカードを差さない(サウンドカードはマザーボードの一番下に差し、他のISAスロットは上から順に使うなどする、Sound Blaster AWE 64 GoldのSPDIF端子も同様にカード本体から離す)、さらに他のカードの配置もできるだけS/Nの良くなるように差し替える、などの対策が考えられます。
 これらの作業は多少面倒かもしれませんが、ここでの対策がもっともS/N比改善に効果があると思います。

電源
 商用電源には、実はかなりのノイズが含まれており、特にアナログ機器を使用する場合非常に大きな問題になります(たとえデジタルミキサーを使っているとしても、ほとんどの場合音源とミキサーはアナログ接続することになると思いますから、決して無視できることではありません)。僕は電源ノイズの影響についてはそれほど詳しくないのですが、電源によりかなり音が変わるという人は少なくありませんし(音が変に揺らいだり、低音の解像度が落ちたり、ハイ落ちしたり、位相がずれたような音になるそうです)、恐らくそのとおりなのでしょう(^^;。では、どうすれば電源ノイズを軽減できるのでしょうか。

 まず電源ノイズ対策専用の機材(パワーディストリビューター?)を導入するという方法があります。これは電源中のノイズをフィルターで取り除いたり、電圧を100V一定に保ったりしてくれるもので、Sound & Recording Magazineのサウンドハウスの広告蘭を見ると、ラックを照らし出すライト付きのもので〜7万円程度、オーディオ誌を見ると数十万円もするようなものまであります。まあさすがに電源のために数十万円もつぎ込める人というのは限られているでしょうから、とりあえずは1万円程度のものをお勧めします(個人DTM(?)ユーザーによく使われているものとしてはTEACのAV-P25R(実売1万円。ソフマップにて確認)があります)。

 次に、電源の接続をいろいろ変えてみましょう。なんでもオーディオのアンプや、パソコン、デジタルシンセなどのデジタル機器は電源にノイズを与えやすいそうですので、これらの機材と音源、ミキサーなどの電源はできるだけ分けるようにしましょう(音源、ミキサーなどの電源だけまとめて上記のようなパワーディストリビューターなどに接続すると尚いいと思います)。また、テレビ、蛍光燈のON/OFF、冷蔵庫、エアコンが自動的にON/OFFするような場面で電圧が一時的に不安定になることがあるようです。これらの電源とも可能な限り分けた方がいいと思われます。

 またこれは基本ですが、電源の極はちゃんと合わせるようにしましょう(コンセント口を見て、どちらかが微妙に大きいというアレです)。なんでもこれを間違うとかなり耳障りなノイズが発生するそうで、そのようなノイズがある場合、もしくは気になる場合は一度すべての機材の極を確認してみるといいでしょう(極について不明な機材もありますが、そのような場合は恐らくどちらでも大丈夫です)。意外に音質が改善されたりするかも知れません(未確認)。

 さすがにアパートを選ぶとき電源のクリーンさまでは教えてくれないでしょうから、与えられた電源をいかにうまく使うか、どれだけクリーンにできるかがポイントですね(^^;。僕の場合上記のような接続し直しは考えたくもないため(^^;、アナログ録音時には家電を含め、必要なもの以外のすべての電源を落とすようにしています(かなりシビア)。

信号レベル
 通常オーディオで使用される信号のレベルには-10db(民生用オーディオ)、0db(DAT、MDなどのデジタルオーディオ機器に見られる)、+4db(プロ用オーディオ)があります(機材のマニュアルを見れば、ほとんどの場合出力レベルも載っていると思います)。ここで当然信号レベルが低ければ低いほど外部からのノイズの影響を受けやすくなりますので、信号レベルに関しては高い方(+4db)が良いということになります。

 そこそこチャンネルの多いミキサーではそれぞれ用途に合った、信号レベルの異なる出力端子が用意されていると思いますので、特にS/Nに注意しなければならないような信号は出来るだけ高い信号レベルで送信するようにしましょう。シンセのボリュームに関しても、シンセ側ではミキサーの入力が割れない程度ぎりぎりまで上げ、ミキサーで下げるような感覚にした方が電送中のノイズには強くなります。

ケーブル
 S/Nを稼ぎたい場合はシールドコードが有効です。シールドコードとは外部からのノイズに対処できるシールド機構を持ったケーブルで、ギターやマイクなど、とても低いレベルの信号を伝送するには欠かせないものです。シンセサイザーなどの高いレベルの信号を伝送する際にはあまり関係ないのですが、それでも外部からのノイズに強いなら強いものを選んでおこうという発想です。

 また、キャノン、もしくはバランスフォーンという、音声信号の正相と逆相両方を電送し、受け取り側で正相−(マイナス)逆相を計算して理論的に電送中の外来ノイズを消去するというケーブルもあります。キャノン端子、バランスに対応したフォーン端子のついているものはキャノンケーブル、バランスフォーンケーブルで接続したほうがいいでしょう。他にもキャノンケーブルには抜けにくいというメリットがあります。

 実はケーブルの材料にも様々な種類があり、音楽用として良いとされるのは純度の高い無酸素銅を使ったケーブルです(多分)。僕はこれまでほとんどすべての接続に100円/mのOFCケーブル(知る人ぞ知るBEE楽器店オリジナル)を使用していたのですが、今回一部の重要な接続部分を約1500円/m〜3000円/mのケーブルに入れかえてみました。
 結果、多少ですが変化が認められました。わずかながらレベルが上がり(電送中のロスが少なくなったということでしょう)、ハイの出が良くなりました。これは、ほんとにわずかなのですが(LRの内片方のチャンネルのみ新しいケーブルにして聞き比べたりしました)、このわずかな差が最終的には大きな音質の差につながるのでしょう。
 ただ、あまりにもほとんど変わらなかった為、今ではBEEの2.5m250円のケーブルも悪くはないなと思っています(^^; 多少音が良くなったにせよ、なにせ値段が10倍以上ですから・・・。ところでプロの現場では50000円/mもするようなケーブルを使っているとか・・・ケーブル1mでそこそこのDTM音源が買えてしまうなんてねぇ(やってられねーよ(怒))。

 今回も長々と書きましたが、ここまで読む人がどれくらいいるのか、いまいち不安です。僕の環境ではこれらの対策を施した結果、随分と音の透明度が増し、位相感が自然になり、音の迫力も上がりました(十分効果あり)。僕としては今度こそ間違いなくCD音質を手にしたと思っているのですが、やはりそこには次なる問題が待ち受けているのでしょう(T_T)。CD音質への道は遠い・・・。