●ハイブリッド音源
EX5の特徴はなんといっても数々の音源方式を内蔵していることでしょう。その内容は、すでに多くの機材に搭載されているおなじみPCM方式のAWM音源、驚くべき価格と見栄えのするデザインで登場した物理モデリング方式のVL音源、各社アナログモデリング音源に対抗して開発された(と思われる)アナログモデリング方式のAN音源、AWM音源にコントロール可能なエフェクト(?)のようなものを接続可能なFDSP音源、さらにサンプリングしたものをAWM音源のソースに利用できるサンプリング音源まで、今日の主要な音源はことごとく網羅されているわけです。では、さらに各音源について深く検証してみましょう。
●まさにYAMAHAなAWM音源
AWMに関しては聞いてすぐ分かる特徴あるYAMAHAの音で、ブライトでアタックからリリースまで直線的かつマルチサンプルによってアタックがばらつくピアノ(サンプル元は多分YAMAHAグランド)、エンベローブの無いざらつき感の気持ち良いパッド、コロコロしたエレピ、などなど。波形メモリもYAMAHAにしては珍しく(失礼?)16MBもつんでおり、これまで問題だったリリースのループ感も普通程度に改善されていました。ただ一つ気になったのは、音によってコードで弾いたときのフランジ感があるということです。ということはやっぱりまだリリースが甘いのでしょうか??しかしながら、RolandのJVや、KORGのTRINITYに比べると、マルチで鳴らした場合の統一間というかクセが無く(多分)、これはEX5一台だけで作ろうとした場合好都がいいのではないかと思います。
●初代VLクオリティーのVL音源
VL音源が入っているとはいってもVL-70mクオリティーじゃ使い物にならないわけで、この点ちょっと心配だったのですが一応EX5は初代のクオリティーのものを積んでくれているようです(ただし発音数は1なのでその後ラックで出た廉価版(名前忘れた)相当のものということになる)。さらっと聞いてみた感じでは特に金管楽器系が素晴らしく(我がTRINITYのソロ音源(Prophecy相当)と聞き比べてもその差は圧倒的)、トランペットのピッチ変化、サックスのブレス感などに見られる音色変化は見事です。さらにEX5ではハイブリッド音源の特徴を生かし、このVL音源をAWM音源とレイヤーして出力できるようです。AWM音源を重ねたパッチを使うと単純なフレーズを鳴らしても決して単調には聞こえない、実用性の高いものになっています。
●AN音源
AN音源も発音数は基本的に1で(レイヤーで2音)VL音源同様AWMと合わせて使うことができます。プリセットを聞いてみた感じではアナログモデリング音源の中でもJP-8000のように現実的な音を出す部類のようですが、その分普通の太い音がしっかり出てくれますので、シンセリードやベース、インパクトあるSEには最適だと言えるでしょう。
●FDSP音源
ここまで紹介してきた音源方式についてはすでにこれまでもあったものですが、このFDSP音源についてはEX5で初めて搭載されたものということで、当然期待も膨らむというものです。さて、一応フィジカルモデリングというこの音源の正体を僕なりに解釈すると、PCM音源(AWM)+全10種類のインサーションエフェクトです(^^;。ただ、インサーションエフェクトとは言ってもベロシティーなどによりそのかかりかたが変わってくるところがミソで、リアルタイムに弾いてみるとその効果を実感できます。FDSP音源の良いところはモデリング(エフェクト?)による効果的な音色変化を得つつ、元となる音はPCMのリアルな特徴を生かせるところにあるのではないかと思います(当然その分DSPパワーも少なくてすむ)。
●サンプラー音源
サンプラーに関しては特に語ることもないと思いますので、ここではメモリ容量について書きたいと思います。EX5は最初から1MBのメモリを内蔵しているのですが、まともに使おうとするとこれは明らかに不足ですのでほとんどの場合増設することになるでしょう。増設には専用のフラッシュメモリ(4MB×2=8MB)に加え、標準的な72ピンのSIMM(一組)が使用可能で、このSIMMに関しては4MB、8MB、16MB、32MBなら、ファーストページでもEDOでもパリありでもパリなしでも使えるとのこと。DIMMに移行して使い道のなくなったほとんどのSIMMを流用できるところがポイントですね(^^;。ただ、ECC対応のもの(PC98Ra用とか?)のものや、32mm以上の高さがあるもの、アクセスタイムが70nsより遅いものは使えないとのことです(マニュアルより)。まあ、そんなメモリの方が珍しいでしょうからほとんど問題はないでしょう。
●同時発音数について
EX5のスペックを見ていて目に付くのが128音という同時発音数ですが、この128音というのはちょっと特殊で、普通に128音出ると思っているとちょっとがっかりさせられます。AWM音源については、一音色を最大4音のレイヤーで作成するのですが、それでも最低31音(AWM音源は常に最大126音の発音が可能なので、126÷4)の発音数が確保できるわけですからまず問題無いでしょう。FDSP音源に関しては、FDSP処理部分が最大16までしか働かないようなので、最大でも16音しか発音しないことになります(FDSP音源に使ったAWMは別にAWMの発音数から引かれる)。残りのAN音源、VL音源に関しては前述したとおり1音なのですが、発音数1のAN音源を使うとFDSPの発音数は半分の8音になり、発音数2のAN音源、もしくはVL音源1音を使うとFDSP音源は発音できなくなってしまいます(ということはAN音源とVL音源を同時に使うこともできない)。さらに、内蔵されているインサーションエフェクトも、AWM以外の音源を使用すると1系統しか使えなくなります。
これはFDSP、AN、VL、インサーションエフェクトの処理に一つのDSPを使用している為に生じる制約なのですが、せっかくいろんな音源を積んでいるというのに同時につかえるのは一つか二つというのは少し残念な気もします。これは一台一パートとして使われることを前提に、マルチ音源としてもそこそこ使えるようにと開発された結果でしょう。あと、サンプル音源はAWM音源と同等(というかそのもの)ですので126音の発音が保証されます。
●プリセットを聞いた感想
もはや搭載音色数も半端ではない最近のシンセサイザーでは(ちなみにEX5はユーザー256、プリセット256の512音色(必要十分))、どこまで音がエディットできるかよりも、最初にどれだけ作り込まれた、即戦力となるプリセットが入っているかがポイントになってくるかと思います。EX5のプリセットは基本的な音色は押さえた上で、流行り系の汚い音(ドラムセットを含む)、SEなども数多く入っています。どれもそこそこ使えそうなものばかりで、全体的には良く出来ている方だと言えるでしょう。
●シーケンサー内臓
内蔵してきましたね、シーケンサー(笑)。まあYAMAHAの棒グラフシーケンサーについては定評がありますし、やはり専門機でやりたい、パソコンにお金を使いたくない、ライブでも手軽にシーケンサーを使いたいという人もいるでしょうから、需要はあるのでしょう。EX5のラックバージョンであるEX5Rにまでシーケンサーがついているのですが(今時KORGでもやらない(笑))、これは新たに音源部分のみの製品を開発するよりはそのままラックにして出してしまおう、ということかもしれません。結局大きいディスプレイが必要になってくるなら、シーケンサーをつけることはハードウェアの有効利用にもなりますし。
このシーケンサー、スペック的には16トラック、分解能480、30000ノート、その他トランスポーズ、グルーブクオンタイズ等も備えているようで、QY最新作にはかなわないものの(確かあれはピアノロールまで装備していたような・・・(^^;)、専門機シーケンサーとしては最高峰の部類に属するのではないかと思います。
あと、シーケンサーには関係ないんですけどアルペジエーターなんかもついてました。
●クオリティー(音質)
EX5はDAが良い、ローがよく出る、と、どこかのデモでYAMAHAの人が言ったそうですが、確かに抜けと奥行きはなかなかのもので、SNの良さが伺えます。またオプションでワードクロック入力付きデジタル出力端子も装備できるというのも、将来システムをデジタルで固めようと言う人には魅力的なのではないでしょうか?
これまでYAMAHAのPCM音源はRolandやKORGのプロ用音源と比較していまいち完璧になれないイメージがあったのですが、ここにきてほとんど横一線に並んだと言えるでしょう(PCM音源の限界、もしくは飽和点であるとも言えると思います)。
とりあえずこんなところで(^^;。EX5は最近のシンセにしては高いような気もしますが、その内容を見てみるとそこそこ納得できるものに仕上がっていると思います。目新しい新製品がなくて退屈していた人、初めてシンセサイザーを購入するにも音質には妥協したくない人、そろそろ76鍵のシンセサイザーが欲しい思っていた人、サンプラー単体では買う気がしないと言う人、3Uの空きを埋めたくて仕方がない人(ただしパネルカラーは暗い青です)、その他YAMAHA信者の方(笑)にはお勧めします(EX5Rならお持ち帰り可・・・重いでしょうけど(^^;)。次期バージョンのMSSにはEX5/5R用の音色表も追加されますのでどうぞご期待ください。