CD音質への道 #6


 CD音質への道連載後約1年が経過しましたが、FrieveはここにきてやっとCD音質をものにしました・・・。最初の記事(CD音質への道#1)を書いた頃が懐かしく思えます(^^;。

 さて、今回ニューアルバム制作のため、MSSを使って様々なマスタリングを試していたのですが、その中で即効性のあるテクニックがいくつか見つかりましたので、ここで紹介したいと思います。以前書いたMSSを使ったマスタリング方法の記事と多少重複するかもしれませんが、そこのところはご了承ください(^^;

まずは2Mixを作る
 ミキサーから直接録音するか、MSSでミックスしている場合はマスターをレコーディングして2Mixに落としてください。2Mixは全く新しいプロジェクトのトラック1、2に貼り付けます。新しいプロジェクトを作るのは、MSSのオーディオ機能、CPUパワーを全てマスタリングに使うためです。

全体をすっきりさせる
 低域のある帯域を3Bandパラメトリックアイソレーターで削ってやると、全体がすっきりすることが分かりました。設定の例としては・・・

 

 などです。このように、1kHz以下の低域をかなり狭い範囲にしぼって削ってやります。この二つの設定は、直列でかけるとさらにすっきりします。つまり、削るポイントを増やしていくことでどんどんすっきりさせることができるのです。

エンハンス
 MSSのイコライザはデジタルイコライザというよりもアナログイコライザのような設計であり(このことは、最近分かりました)、使うだけでエンハンス効果があります(^^;(エンハンス効果のないイコライザは、アイソレーターで代用できます)。というわけで、とにかくイコライザをかけてみましょう。

 普通のデジタルイコライザでこの設定をやるとただ全体のレベルが4db上がるだけなのですが、MSSのイコライザでは、倍音が加算されたような音になります。ポイントは6db以内でかけること。これ以上かけると元の音よりエンハンス音の方が大きくなってしまいます。

空気感を出す
 エンハンスと同じようにMSSのイコライザを使って、空気感を出すことができます。

 ここでは、3Bandパラメトリックイコライザを使用して12000Hz〜16000Hz以上を3〜9db程度上げてやります。この周波数帯を上げてやることで、音の空気感を高めることができます。ただ、当然ながら元ソースにノイズが多いと、かなりノイズが目立ってくると思われます。S/Nの改善に関しては前回の記事も合わせて参照してください。

マルチバンドコンプレッサー効果
 マルチバンドコンプレッションには、全体が安定(一曲の中でHiが強すぎたり、Loが弱すぎたりということがなくなる)、暖かく聞こえる、音が太くなる、同じピークレベルで聞いても音量が大きく聞こえるなど、様々な効果があります。

 マルチバンドコンプレッサーを使う為にはバスを利用するのですが、少し設定が複雑になります。

 まず、トラックのボリュームは0にし、直接マスターへ音を送らないようにします。その代わりバス1〜3のレベルを256(最大)とし、バス1〜3へ同じ信号を出力します。

 バス1〜3を有効にし(Pをチェック)、それぞれEFX1、2に3Bandグラフィックアイソレーター、コンプレッサー3 LRをアサインします。

  

 3Bandグラフィックアイソレーターの設定ですが、ここではBus1ではハイ、Bus2ではMid、Bus3ではLoのみを出力する設定になっています。こうすることにより、トラックから入力された音を3Bandに別け、それぞれの帯域に独立したコンプレッション処理を施すことができます。

 コンプレッサー3 LRの設定は、大体このようになります。ダイナミクスは最大の200%(場合によっては100%程度まで下げます)、アタックは基本的に0で、リリースはテンポ等によって変更します(リリースが短いほど圧縮感が強くなります)。アタック、リリースはBus1〜3まですべて同じ設定にしてください。

 ここで、Busによってターゲット、アウトプットの値を変更することで、全体のバランスをとります(ほとんどの場合はHiが足りないと思いますので、Hiを上げ気味に、Mid、Loは下げ気味になると思います。慣れないうちはお気に入りのCDなどと聞き比べて、同じようなバランスになるように調整するといいでしょう)。

 ここでは全体を3Bandに分けていますが、アイソレーターにパラメトリックアイソレーターを使用することにより、さらに多くのバンドに分けることができます。

ディエッサー
 生演奏が入った曲では、ある帯域が時々出過ぎ、耳障りに聞こえたりします。ここで、その帯域にコンプレッサーもしくはリミッターをかけてやることにより、これを改善することができます。実際のやりかたとしては、先ほどのマルチバンドコンプレッサーの設定で、コンプレッサー3LRの後にこれらのエフェクトをアサインします。

 ここでの設定はソースによってかなり変わってきますので、最も自然に聞こえるように各パラメーターを調節してみてください。

ステレオ感を高める
 僕はもうほとんど使わなくなりましたが、やはりステレオ感を増強するにはサラウンドが一番です。マスターのEFX1にサラウンドをアサインしてみましょう。

 デプスはせいぜい15%まで。かけすぎると全体がぼやけたりします。

クオリティーチェンジ
 クオリティーチェンジはマスタリングにおいてかなり有効です。マスターのEFX2にクオリティーチェンジをアサイン、以下のように設定して見てください。

 これにより、クリアかつ耳障りでない(Hiがかなり出ているにもかかわらず自然な)サウンドに仕上げることができます。さらに、スピーカーによる聞こえの違いが大きく改善されます。

レベルを稼ぐ
 レベルを稼ぐには、レベルマキシマイザーを使用します。レベルマキシマイザーは、一回で多くレベルを稼ごうとするよりも、2回に分けてかけた方がレベルが稼げるようです。僕の場合、マスターのEFX3、4にレベルマキシマイザーをアサインしています。

 

 このように、最初のレベルマキシマイザーでは割れる限界ぎりぎりまでレベルを稼ぎ、さらにその後で1〜2db稼ぐようにします。最初のレベルマキシマイザーで市販CDと同程度のレベルまで、次のレベルマキシマイザーによりさらにレベルが稼げます。

 曲中で、瞬間的にLoやHiが強く、レベルマキシマイザーで音が割れてしまうような場合は、トラックのオーディオコントロールで、Busレベルをコントロールします。例えば今55小節めの頭のシンバルが原因でHiが割れる場合を考えます。

 このように、Bus1へのセンドレベルを一時的に下げてやることにより、レベル超過を防ぎます。このような処理をすると一時的にバランスが崩れてしまうのではないかと思われがちですが、マルチバンドコンプレッサーによりその聞こえかたは思いのほか自然です(Bus1には先ほどのマルチバンドコンプレッサーでHiを割り当てています。マルチバンドコンプレッサーを使用していない場合は、EQ-Hiなどを使用します)。

これこそMSS究極のテンプレート
 いかがだったでしょうか。これらの機能を駆使すれば、市販CDに全く引けをとらないマスタリングが可能です。ここで、これらの機能をすべてアサインしたテンプレートを紹介します。これをプロジェクトファイルとして保存しておいて、マスタリング時に呼び出し、パラメーターを調節して使うようにすると便利です。

 これを見ると実に2トラック、3ステレオバス、8モノラルエフェクト、10ステレオエフェクトを同時使用しているわけですが、MMX Pentiumクラス以上のCPUならリアルタイムか、遅くても1.5倍程度の長さでトラックダウンできるはずです(どうしてもリアルタイムでトラックダウンしたいなら不必要なエフェクトを削るなどするといいでしょう)。

 個人で手に入るツールの中でこのようなマスタリングが可能なのは僕が知る限りProTools(実売価格50万円以上)や、TC ElectronicsのFinalizer(ラックエフェクター、実売価格30万円程度)くらいのものですし、ましてこれほど手軽に高品位なマスタリングができるのはMSSだけでしょう。アナログマスタリングに比べると、ノイズ、歪みが全くない、機材同士の相性問題がない、安い(マスタリング用のアナログエフェクターは一つ100万円以上するものがほとんどです)など、波形編集ベースのマスタリングに比べても、すべてのエフェクトパラメーターをいつでも試聴しながら変更できる、やりなおしが簡単、音質劣化がほとんどないなど、多くのメリットがあります。

 自主制作CDを作る場合などは是非この方法を試してみてください(お友達にも教えてあげてください(^^;。個人的には完全プロフェッショナルな方にもお勧めします)。今後のMSSのバージョンアップでも、特にマスタリング関係のエフェクトを充実させていきたいと思っていますのでご期待ください。