このような音をPCMシンセサイザーで満足に出すためには、リリースのループを長くしたり、1オクターブをいくつにも分けたマルチサンプリングなどを行うのですが、そのためには大容量の波形メモリが必要になってきます。ところがマルチ音源など、いろいろな音が出せるように設計されている音源では一つの音に割けるメモリというのも限られてきますから、あまり豪華なピアノ音を搭載するわけにはいきません。
・・・というわけで、専用音源の出番です。今ある音源にとびきりのピアノ音源を加えて、ゴージャスなピアノ音に浸ろうではありませんか!(笑)。
●各社ピアノ音源
とりあえず、僕の知っているピアノ音源を挙げてみますと・・・。
| メーカー | 音源 | 備考 |
|---|---|---|
| Roland | PIANOボード | JVシリーズ用エクスパンションボード |
| YAMAHA | P-50m | XG対応音源(拡張用) |
| KORG | SG-Rack | ステージピアノSG-ProXのラック版 |
| Kurzweil | MP-1 | |
| Alesis | Stereo Grand Piano QCard | QSシリーズ用エクスパンションカード |
| Ensoniq | Perfect Piano | ZR/MRシリーズ用エクスパンションボード |
●SG-Rackの感想
とりあえずピアノの音に限って言えば、思ったほどよくなかったというのが素直な感想です。TRINITYのピアノ(一種類しか入ってない(^^;)と比べても、いまいち使えそうにありません。アタック感が低音に良く出ていて、かちっとしている割には生々しい響きが得られる点、レスポンス、リリース、ステレオサンプリングに関してはいいと思うんですけど、どうも高域が足りない感じで、ダンス系の曲でオケに混ぜて使ったり、ピアノ中心の曲で使うというのは難しいような気がします。まあ、元々ステージピアノ用の音ということですので、バンドの中なんかで使われることを想定しているのでしょう。
あと、これはTRINITYのピアノの音にも言えることなのですが、どうも位相がずれているような気がします。ピアノの音というのは、結構色々な角度からマイクを向けて(例えば、弦に直接、正面から、下からなど)さらにこれをミックスしてサンプリングすると聞いたことがあります。そのため元々ピアノによって音が違うのが、さらにサンプリングのしかたによって大幅に音が変わってくるのですが、この時のセッティング、調整を完璧にやらないと(とはいっても想像する限りものすごく大変)、このような音になってしまう可能性があります。まあ、僕もそれほど耳のいいほうではないと思いますので、実際のところどうかは分かりませんが・・・。とりあえず、このような音は単音で弾いているうちはいいものの、ミックスするとなると大変です。イコライザである程度の補正は望めますが、異常に神経を使います。下手に手を出すと「良い音なのに使えない」なんて事態にもなりかねませんので、注意が必要です(^^;。
この音源はピアノ意外にもライブでキーボードプレイに必要と思われる基本的な音色が一通り入っているのですが、こちらの方はなかなかのものです(^^;
●Alesis Stereo Grand Piano QCardの衝撃
上に挙げた音源の中で、このStereo Grand Piano QCardの音だけは、インターネットで聞く事ができます。アドレスは、http://www.alesis.com/。ダウンロードファイルはMP2形式になっていて、これは最近流行のMP3プレイヤーなどで聞く事ができます。この音の感想としては・・・かなりの衝撃を受けました。Alesis独特の高域の抜けといい(これについては好みが別れるところですが)、自然で充実した中低域といい、リリースの長さといい、なかなかのものです。僕の自分の持っている音源の一番良いピアノの音と聞き比べてみましたが、「これは出せないな」というのが率直な感想です。というわけで、今のところこれが一番欲しいです、はい(笑)。
お値段としてはQSR(QSシリーズの音源版、QCard最大2枚装着可)が新品で110,000程度、カード自体の値段は不明・・・ということで、JV-2080並みの出費を強いられるわけですが・・・これは、QSシリーズの音も欲しい人向けでしょうね・・・。ピアノの音だけにこれだけの出費が許される人というのはなかなかいないでしょう。
(余談)Alesisというのは(僕の知っている限りですが)、初めて普通の音の出るデジタルシンセサイザー(Quadra Synth、S4)を出したのが3〜4年ほど前と、シンセサイザーに関してはかなり新しいメーカーです。このQuadra Synthの音というのは、かなりハイファイで当時僕も欲しかったのですが、今聞いてみるとかなり適当なサンプリングで、しかも細い音だったりします(^^;。しかしながらその後Alesisも経験を積んだようで、QSシリーズはRolandのJVシリーズと聞き比べても聞き劣りしない、なかなか使える音源になっているような気がします。今ある程度オールマイティーに使える音源の購入を考えているなら、QSRも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
●気になるEnsoniqのPerfect Piano
この「Perfect」という響きだけで気になってしまうというのはまだまだ修行が足りないということでしょうか(笑)。このPerfect Pianoボードについては、大変気になります。なんでもサンプリングメーカー提供の音だということですので、サンプラー向けの大変ゴージャスな音が期待できます。そもそもサンプラー用のピアノというのは、かなり前から一音色で数メガもあるようなものが、各社サンプラーのフォーマットに対応したCD-ROMなどで提供されていました。これらの音はちょっと聞いたことが無いので何とも言えませんが、とにかくこのPerfect Pianoにはそのクラスのものが入ってくるということになります。
これを買おうとすると、現在MR-Rackが実売で大体14万円程度、ボードの値段は不明(それほど高くはないらしい)ですが、先ほどのQSRよりもさらに高い買い物になりますね・・・。
(さらに余談(笑))Ensoniqの製品としてはTSシリーズ、KSシリーズなどがありますが、これらの製品に関しては特にパッドの音の評判が良かったように記憶しています。EnsoniqのホームページでMR-RackのデモをWavファイルで3曲ほど聞く事ができると思うので、気になる人はこちらを聞いてみるといいかもしれません。アドレスは、http://www.ensoniq.com/。ただ、音質はかなり悪いです(確か22kHzの8bitとか)。
●その他・・・
JVシリーズ用のSessionボードに入っているピアノは、空気感がある、生々しいなど、僕の周りではかなりの評判です。また、これは未確認情報ですが、Rolandのステージピアノは、発音方式がピアノに特化されているものもあるそうです。さらに未確認情報ですが(噂レベル)、近いうちに波形メモリに1GBを使用したソフトウェアシンセサイザーのピアノ音源が登場するそうです。なんでも波形はHDDに置き、発音毎に読み出すという方式だそうで、これにより1GBというとてつもない波形メモリを実現している様子。マルチサンプリングも、各音毎のサンプリングに加え、音を弾く強さも3段階に分けてサンプリングされているとのことで、これはかなりのリアリティーが期待できます。
そもそもピアノなどというのは、鍵盤を押した瞬間、つまり弦がはじかれた瞬間にその後の音がほぼ決定してしまうような楽器ですので、まさにPCM音源方式が最適。発音後も複雑な音色変化をするもの、例えばバイオリン、管楽器などと違い、波形メモリさえ増やしていけば、かなり強引にリアリティーを追求することができるわけです。あとはコストとの戦いですが(ROM容量、サンプリングの人件費等々・・・)、ある程度以上メモリを積んでも、例えば4MBピアノと8MBピアノを聞き比べて、果してメモリ容量を倍にしただけの音質差がそこにあるのかとか、そこまでリアルにすると、逆に汎用性がなくなってしまうのではないかとか(リアルな波形ほど空気感が固定されてきます)、それだけのROMを割くならもっとピアノの音にバリエーションを持たせた方がいいのではないかとか(ピアノの音というのもその目的によってかなり音のバリエーションが要求されるものですので、なかなか一つの音だけですべてをまかないきれないというのがあります)、さまざまな疑問がわいてきます。やはり、一言で「いいピアノの音」とは言っても、なかなかその判断は難しいですね。
ピアノだけに音に対する好みも別れると思うので、最終的にはやはり自分でいろいろ聞いてみてから選んだ方がいいでしょう。まあ、自分で気に入ったピアノの音があって、それがちょうど曲にはまっていればいいのでしょうけど・・・どうしてもそれより良い音を聞いてしまうとそれでは満足できなくなるんですよね(^^;。これもまたシンセサイザーユーザーの宿命ということで今回の音楽機材探求を締めくくらせていただきます(笑)。