Frieve-A's floor - Column
[Top] [Column]

HTPCに挑戦 #3 Trimension DNMとは

前回、WinDVD + ffdshow + Zoom Playerによる画質はそれほどではなかったことが分かったため、今回はWinDVD 6 Platinumの最新機能、Trimension DNMにスポットを当てたいと思います。

Trimension DNM…WinDVD 6で初めて遭遇した名前です。しかもWeb等で検索してもWinDVD 6のページで紹介されている程度の簡単な解説ばかりで、詳しい技術解説は見つからないという、なんとも謎の多い技術です。

一方、どういうことをやろうとしているのかということはその簡単な解説文だけで容易に想像できます。もともとのフィルムは秒間24フレームですので、次のフレームまでの時間間隔は1÷24の41.7msということになります。

音の世界のサンプリング定理に照らし合わせて言えば、サンプリング周波数24Hzでのサンプリング。これを忠実に再生するには、まず41.7ms等間隔での正しい再生(ジッタがないこと)と、実際に再生する際にはより高い周波数で再生されることになりますので(後述)、その周波数に合わせる際に生じる折り返し歪み(フリッカー?)をカットする時間方向のフィルタが必要になります。

一般的なプロジェクタや最近の液晶、プラズマなどの固定画素ディスプレイはほとんどが60Hzですから、元々24フレームである映画を再生するには、24フレームだったものをなんとか60フレームに合わせて再生する必要があります。このための一番安易な方法が、いわゆる2:3プルダウン処理です。

2:3プルダウン処理では、フィルムの最初のフレームを2回、次のフレームを3回、またその次のフレームを2回、次を3回…というように表示することで、24フレームを60フレームに変換します。この方法では当然ながらジッターが生じ、結果として動画がカクカクしているように感じたり、盛大な擬似輪郭が見えたりします。テレビで映画を見ていると、1秒間に6回ほどカクカクしているように感じられるのは、まさにこのジッターの影響です。あまりに一般的すぎて「これがフィルム独特の映像」と思っている人も多いほどです。



他にも最初のフレームを2回、最初のフレームと2番目のフレームを半分ずつ合成したフレームを1回、2番目のフレームを2回、3番目のフレームを2回、3番目のフレームと4番目のフレームを半分ずつ合成したフレームを1回、4番目のフレームを2回…なととする方法などもありますが、結局メリット、デメリット半々で24フレームでそのまま再生した絵にはほど遠いようです。

では、72Hz表示可能なPCディスプレイモニタでDVDを表示すれば、元の映像が忠実に再現できるのかというと、これまたそういうわけではありません。それは、ジッターの問題は解決されたものの、フィルタの問題が残っているからです。左から順に元の信号、フィルムに記録された信号、72Hzのディスプレイで再生した場合の信号、72Hzのディスプレイで再生する際の理想的な信号を示します。



結局、72Hzで再生した場合も依然として信号は階段状であり、60Hz時(167ms毎に擬似輪郭が見える)よりは随分マシではあるものの、依然として72Hzでの3フレーム(41.7ms)毎に擬似輪郭が見えることになります。

一方映画館で24フレームのフィルムを再生する場合、まずジッタは先ほどの例同様ゼロですから問題ありません。しかし、やはりフィルタリングできない問題は存在しています。

ご存知の方も多いとは思いますが、映画館で使われる映写機からの光は1秒間あたり48回点滅し、光っているタイミングで同じ1コマの映像を2回ずつ(2×24コマ)映し出しています。

ここで液晶やDLPプロジェクターのように光りっぱなしではなく点滅させるのは、次のコマへフィルムを送る際どうしても一旦光を閉じる必要があるからです。

2倍の48コマにしているのは、1秒間当たり24回という少ない点滅は人間の目にはっきりと認識できてしまい、非常に不快に感じる、これを48回にすると、なんとか耐えられるレベルまで点滅感を抑えることができるからです。

さて、このようにして再生される信号は、実世界の元信号(左)に対して右のように96Hz、2回に1回ゼロが挿入され、ゼロ以外のところは2回同じ値が続く(中央)、という信号になります。これはやはり本来再生したい信号とは異なるものです。



というわけで、そういう意味では映画館の映像も理想的であるとはいえません(そもそも24フレームというコマ数が十分でないということかもしれませんが)。今までは24フレームの元映像を48フレーム、72フレームにアップサンプリングして出力する際にも、理想的な信号処理は行われていなかったとも言えると思います。ただし人間の目は時間軸方向に鈍感だということもあり、それが本来必要なフィルタの代わりになることで、何とか見られた絵になっている、というのが実際のところでしょう。

そこで、Trimension DNMの登場?です。現在の映画館のように人間の目のフィルタ効果?に頼るのではなく、そもそも元の信号に近い映像を作り出し、人間の目に届けることができたとすれば、人は映像をより美しく感じることができるはずです。

では、それをどのようにして実現するかですが、先ほどの72Hzのディスプレイでの例も映画館での例も、再生する前にデジタル領域で元の信号に近い信号を復元させることは可能です。

例えばどちらの例でも最初から1フレームあたり2回(72Hzの場合3回)表示する(それぞれアップサンプリング後2サンプル、3サンプル毎の移動平均処理した場合に相当)ようなことは行わず単純に2倍3倍にアップサンプリングし、アップサンプリングによるによる写像分を除去するようなフィルタ処理を施すことでこれを実現できます。

詳しい資料が無い以上これは私の想像にすぎませんが、Trimension DNMは恐らく、上に書いたような処理を行っているのだろうと推測します(使用中のCPU使用率や生成される絵の特徴から考えても、妥当なラインでは?)。もちろんただ単純に上に書いたような処理をやってしまうとシーンの切り替わりや、画面がスクロールする際に画像の乱れが発生してしまいますので、ある程度適応的な動作はさせているはずです。

というわけですので、ディスプレイの周波数を72Hzに設定できるアナログCRTや三管プロジェクタを使っていたとしても、Trimension DNMの効果はあるはずですし、60フレームに変換する際も同様にして時間方向の信号に忠実なリサンプリングを行うことにより、ジッタの影響から解放されることが期待できます。

次回は実際にTrimension DNMの効果を検証してみたいと思います。



[Column]コラムへ戻る