Do-Tsubo Column

第2章 「ワインの壺」
04年06月14日
ワインセラーを買った。
2500本収納の貯蔵室……と言いたいところだが、僅か6本収納の小型のヤツだ。
いや、小型だからと言ってバカにはできない。
大型冷蔵庫が買えてしまうのではないかというほどのプライスだ。
横浜のヨドバ○カメラで、あの手この手で値引き交渉を行なったが、期待するほど引いてもらえなかった。
(本部から固く規制が出ているそうだ。最近はヤマ・コジに圧されて経営が厳しいらしい(推測)。)
店に在庫があったので、そのまま持って帰ることにした。
貧乏性の私は、せっかく買ったものは今日から使いたかったし、家では可愛いワイン達が待っている。(…もはやペット感覚 ^^;)
……しかしそれが大失敗。重すぎる。
本体の重さは12kg、収納家具は8kg (推定)。
10kgのコシヒカリ2個分ぐらい…って思った貴女!、それは違うのです。
箱がとんでもなく巨大なので、ヘンな体勢で持つ必要があるのです。
100円パーキングに停めてある車まで300m、それは神社の300段の石段に思えた。
黄昏の帷子川(タマちゃんはもういない)沿いの道。脳内から さだまさし の歌が聞こえてきた。
※翌日から数日間、妻と共に強度の筋肉痛に悩まされる事になる。
なぜワインセラーを買ったのか。
それは、もちろんワインを熟成させる必要が生じたからだが、そこには、あるワインとの運命的な出会いがあった。
約1年前……新婚旅行先のイタリアのリストランテで、初老のご夫婦から赤ワインをグラス半分お裾分け頂いた。そのワインの名は、バローロ。
そう、イタリアワインの中では最も名の知れた王様である。
その時の出会いの衝撃は、おそらく一生忘れる事は無いだろう。
痺れる舌。
津波のように押し寄せてくる香り。
口の中で変化し続ける余韻。
にもかかわらず、料理の味を麻痺させることは無い。
…これぞ、まさに嗜好品。これは飲み物ではない。嗜好品だ。
ソムリエなら、こういう時は意味不明な比喩表現で美味しさを表すのだろうが、この衝撃的な出会いに能書きは不要だ。
平凡なサラリーマン、しかも全くの無知な者が、リストランテでいきなりバローロを注文できるハズもない。
もしあの時、初老のご夫婦のお裾分けが無かったら、いまだにビスト□(甘口)を赤ワインだと思って飲んでいたかもしれない。
そんなこんなで、すっかり即席イタリアワイン好きになってしまった自分。
新しい出会いを求めて、休日になるとディスカウント酒屋を巡っていた。
…そんなある日、またしても運命的な出会いが…。
新聞チラシを頼りに、行った事が無い酒屋に向かった。
家から車で10分ほどの所にある、ディスカウント酒屋。
店頭には格安ペットボトルと箱売り缶ビールが山積みになって溢れている。
店の外観は、上から見ても下から見てもどこから見ても典型的なディスカウント酒屋である。
ところがどっこい、店内に一歩足を踏み入れると、かなりマニアックな世界が繰り広げられていた。
世界各国のビール。
見たことも無いスピリッツ類。
ヤモリのような爬虫類がそのまま瓶詰めされている酒。
高さが1mもあろうかというほど巨大な赤ワイン。(もちろん売り物)
下條アトム風に言うなら、こんな感じだ。
未開の酒屋でぇー
見たことも無いお酒達にぃー
ToYoZo がぁー
で あ っ た ぁ 〜。
少々たじろぎながらも、たくさんの酒類を眺めつつ、店の奥へとゆっくり進んでいった。
ビールのコーナー。ウィスキーのコーナー。ブランデーのコーナー。
その他スピリッツのコーナー。そしてワインのコーナー。
……と、その奥に、いつか見た雪印の冷蔵庫が置かれていた。
そう、駅の売店やタバコ屋で、パック牛乳が冷やされている、アレだ。
よく見ると、その雪印冷蔵庫には、手書きのメッセージが貼られていた。
『ヴィンテージ(年代もの)のワイン』
そう書かれた紙が、雪印冷蔵庫に貼られていた。
中を覗くと、なるほど、牛乳パックではなかった。
いかにも高級そうなワインが、その雪印冷蔵庫の中に並んでいた。
その中のひとつに、我々夫婦の4つの目はクギ付けになった。
バローロ・エリオアルターレ
イタリアから帰国後、イタリアワインの情報をネットで調べまくったのだが、
そこで気になっていたのが、このエリオアルターレのバローロだった。
カッチョいいデザイン。しかも1998年ヴィンテージ。
(注:我々夫婦が学生時代に出会った年)
その憧れのバローロが、今、目の前にある! (雪印の冷蔵庫の中に。)
しかも、忘れていたがここはディスカウント酒屋。
半値に近い値段だ。
とは言え、普通のサラリーマンが給料日でもないのにポンと買えてしまうような値段ではない。
その日は、後ろ髪を引かれる思いで帰路についた。
だが、心には決めていた。今度、絶対買おう…。
だが、問題があった。
せっかく買ったからには、長い時間かけて熟成させたいところだが、
日本の夏の暑さと冬の乾燥は、ワインにとって大敵らしい。
なるべく温度変化が少ないようにと、我が家のワインラックは玄関に置いてあるのだが、
ほとんど気休めでしかない。
そこで登場するのがワインセラー。
熟成に最適な温度と湿度を保ってくれる らしい。
欲しい、バローロ・エリアオルターレ。
欲しい、ワインセラー。
雪印冷蔵庫ではない。真っ当なワインセラーが欲しい。
…6月。待ちに待った季節が到来した。
梅雨ではない。ボーナスの季節だ。
ボーナス支給日の2日後、あのディスカウント酒屋に駆け付け、
雪印の冷蔵庫を開けてもらい、
そして買った。バローロ・エリオアルターレを。
そして、話しは最初に戻る。
これが、買ったばかりのワインセラー。
ペルチェ式で、フルボトル6本まで貯蔵することができる。
温度を12/14/16℃から選択できるが、とりあえず14℃にしておいた。
騒音はほとんど無いので、寝室のベッドのすぐ横に置いた。
自分が寝ているすぐ横で、バローロをはじめ、結婚祝いで頂いたカロンセギュールなどが
眠っている。…そう思っただけでも、かなり幸せな気分になる。
反対側には妻が寝ているというのに…。
ワインに温度変化は禁物なので、ドアは可能な限り開けてはならない・・・のだが、
困ったことに、気になって気になって1日1回ドアを空けてしまう。
……ん? これじゃあ、冷蔵庫の野菜室でも良かったのでは? (^^;

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