大きな音(マスカ)の直前・直後や周波数の近い領域にある小さな音(マスキ)が、実際よりも聞こえづらくなるという“聴感マスキング”の現象を、様々な設定を試しながら視覚的・聴覚的に体験できるアプリを公開しました。オーディオやDTMの入門教材として、また人間の聴覚特性の解説を行う際にも便利にお使いいただけるのではないかと思います。

周波数マスキング
大きな音量の信号とほぼ同じ周波数帯にある小さな音量の信号が、耳で捉えにくくなる現象です。マスカとマスキの周波数を近づけていくことで、周波数が近いほど小さな信号が覆い隠される様子を直感的に体験できます。
時間マスキング
大きな音量の信号の直前・直後にある小さい音量の信号が聞こえづらくなる現象です。トーンバーストを用いて実験すると、大きい音(マスカ)に続く小さい音(マスキ)が特に聞こえづらくなることが分かります。
アプリURL / ソースコード
Frieve Auditory Masking Experienceは、どなたでも今すぐ無料でお楽しみいただけます。また、本アプリはオープンソースとしてコードも公開しています。
使い方解説
マスカ(大きな音)の設定
「マスカ再生周波数(Hz)」スライダで大きな音の周波数を変更します。
「マスカノイズ帯域(Hz)」スライダはノイズモード使用時に有効になり、指定した帯域幅のバンドパスノイズが再生されます。
マスキ(小さな音)の設定
「マスキ再生周波数(Hz)」で小さい音の周波数を変更し、マスカにどれだけ近づけるかを選びます。
「マスキ再生音量(dB FS)」や「マスキ再生タイミング(ms)」を調整し、大きな音との音量差や再生タイミングのずれによって聞こえ方がどう変わるかを確認しましょう。
再生信号モードの選択
「トーンバースト」「トーン」「ノイズ+トーン」の3種類の再生方式を切り替えられます。
「トーンバースト」を選択すると、0.5秒間隔で断続的に音が鳴り、時間マスキングの効果をより明確に体感できます。
「ノイズ+トーン」では、一定帯域のノイズにトーンを重ねることで周波数マスキングの様子が視覚的に確認できます。
再生・停止ボタン
「▶ 再生」ボタンをクリックすると、設定したパラメータに基づいて音声が再生され、スペクトル表示や波形表示が動的に変化していきます。
「■ 停止」ボタンを押すと再生が停止します。スペースキーでも再生/停止の切り替えが可能です。
スペクトルと時間波形の表示
画面下部には、リアルタイムの周波数スペクトルと、1秒間の音圧レベル推移がそれぞれ表示されます。
周波数スペクトルでは、マスカ(赤)やマスキ(青)の周波数位置と比較しながら、実際の再生音に含まれる音声成分(黄色)のレベルを確認することができます。
時間波形表示では、直近1秒間のRMSレベル推移のほか、バースト再生のタイミング(赤・青の縦線)が表示されます。
まとめ
大きな音が小さな音を覆い隠してしまう「マスキング現象」は、オーディオコーデックの圧縮技術や編曲、ミキシングなど音楽制作時の各種テクニック、人の聴覚メカニズムを理解する上で欠かせない重要なポイントです。今回公開した「Frieve Auditory Masking Experience」は、こうしたマスキングの仕組みを「耳と目の両方」で簡単に体感しながら、周波数と時間の両面から理解を深めることを目的として開発しました。デジタルオーディオやサイコアコースティックスの分野を学ぶ方はもちろん、音の不思議をシンプルに楽しみたい方にも役立つアプリケーションになれば幸いです。
ぜひご活用いただき、オーディオにおける人間の聴覚特性の奥深さを体験してみてください。
解説動画はこちら
【オーディオ】聴覚マスキング特性の感覚を一瞬で体得するための動画【DTM】
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